幸せな家庭の鍵
配偶者の親と上手に付き合う
ジェニー *: 夫ライアンの母は,何かにつけてわたしを非難しました。でも,わたしの両親のライアンに対する態度も大差ありませんでした。実際,両親はそれまで見たことがないほど失礼な接し方をしていました。わたしたち夫婦にとって,互いの親に会いに行くことは,とても苦痛でした。
ライアン: 母は自分の子どもに見合う人などいないと考えていたので,最初からジェニーのあら探しをしました。ジェニーの両親も同じで,いつもわたしをけなしました。そういうことがあると,ジェニーもわたしも自分の親の肩を持ち,言い合いになりました。
配偶者の親との不和は,ジョークのネタになるかもしれませんが,当事者にとっては笑いごとではありません。インドに住む主婦のリーナはこう言います。「夫の母は何年もの間わたしたちの生活に干渉してきました。母に対しては怒れなかったので,よく夫に怒りをぶつけていました。夫はいつも,わたしと母との間で板挟みになっているようでした」。
親が結婚した子どもの生活に干渉することがあるのはなぜでしょうか。冒頭に出てきたジェニーは一つの可能性を挙げて,「若くて経験の浅い人に自分の息子や娘の世話は任せられないと思うのかもしれません」と述べています。リーナの夫ディリップは,さらに一歩踏み込んでこう言います。「親は,多くの犠牲を払って子どもを育てたのに,わきに追いやられたように感じるのかもしれません。あるいは,息子や娘が幸福な家庭を築くための知恵を持ち合わせていないことを本当に心配しているとも考えられます」。
もっとも,親が子どもから相談されて,結果的に干渉してしまう場合もあります。オーストラリアのマイケルとリアンという夫婦の例を考えてみましょう。マイケルはこう言います。「妻の家族は結びつきが強く,皆で何でも話し合う習慣がありました。そのため結婚してからも,妻は本来わたしと決めるべき事柄について,よく父親に相談しました。妻の父は良いアドバイスをたくさんくれましたが,わたしは妻が夫のわたしではなく父親に相談するのが面白くありませんでした」。
確かに,配偶者の親との関係は,夫婦にとってストレスになることがあります。あなたの場合はいかがですか。配偶者の親とうまくいっていますか。あなたの配偶者と,あなたの親の関係はどうでしょうか。ではこれから,生じ得る二つの問題と,それらにどう対処できるかを考えてみましょう。
問題1:
配偶者が親にべったりしすぎているように思える。スペインに住むルイスはこう言います。「妻は,自分の両親の近くに住まなければ親不孝者になると考えていました。一方,息子が生まれた時,わたしの両親が毎日のようにやって来たので,妻はストレスがたまったようです。その結果,何度も夫婦げんかをしてしまいました」。
関係する事柄:
聖書は結婚について,「男はその父と母を離れて自分の妻に堅く付き,ふたりは一体となる」と述べています。(創世記 2:24)「一体」となるというのは,単に一緒に暮らすという意味ではありません。夫と妻が新しい家庭を築くことを意味していて,それを自分たちが生まれ育った家庭よりも優先させなければなりません。(コリント第一 11:3)もちろん,夫も妻も引き続き親を敬う必要があり,それには親に気遣いを示すことが含まれます。(エフェソス 6:2)では,配偶者がその責任を果たそうとする結果,あなたが自分はないがしろにされていると感じる場合,どうしたらよいでしょうか。
何ができるか:
状況を客観的に見るようにしてください。配偶者は本当に親にべったりしすぎているのでしょうか。それとも,自分の親に対するあなたの接し方とは違うというだけのことでしょうか。もしそうであれば,あなたが育った背景は,あなたの見方にどんな影響を与えている可能性がありますか。心のどこかで少しねたましく感じていることはないでしょうか。―箴言 14:30。コリント第一 13:4。ガラテア 5:26。
こうした質問に答えるためには正直に自己吟味する必要がありますが,そうすることは大切です。結局のところ,あなたと配偶者が互いの親のことでしょっちゅう言い争っているなら,それは親との付き合い方の問題というよりも,むしろ夫婦間の問題だと言えるでしょう。
夫と妻が常に全く同じ見方を持つということはありません。多くの場合,夫婦間で問題が生じるのはそのためです。ですから,配偶者の観点で物事を見るよう努力してみてはいかがでしょうか。(フィリピ 2:4; 4:5)メキシコに住むアドリアンはそのように努力しました。こう語っています。「妻はあまりよくない家庭環境で育ったので,わたしは妻の両親となるべくかかわらないようにしていました。そのうち会うことさえ全く拒むようになり,何年も顔を合わせませんでした。そのため,妻とよく口論になりました。妻は自分の家族と疎遠になることを望まず,特に母親と親しくしていたかったからです」。
やがてアドリアンは平衡の取れた見方ができるようになりました。こう述べています。「妻は両親と頻繁に会いすぎると感情的に参ってしまいますが,逆に全く会わないとやはり問題が生じます。わたしは再び妻の両親と接するようにし,良い関係を保つようできるだけ努力しています」。 *
やってみましょう: 夫と妻の双方が,相手の親との関係で特に気になっていることを紙に書きます。相手を責めるのではなく,自分がどう感じているかを書くようにします。それから紙を交換し,互いに何を書いたか見ます。どのように力を合わせて問題を解決できるか,一緒に考えましょう。
問題2:
配偶者の親が何かと干渉してきて,あれこれ意見を言う。カザフスタンに住むネルヤはこう語ります。「結婚して最初の7年間は,夫の家族と同居していました。子どもの育て方や,わたしの料理や掃除の仕方
などについて,絶えず口出しされました。そのことについて夫や姑に話しましたが,いざこざが増えるばかりでした」。関係する事柄:
結婚した人は,もはや親の権威のもとにはいません。聖書は,『すべての男の頭はキリストであり,女の頭は男である』と述べています。つまり,妻の頭は夫なのです。(コリント第一 11:3)とはいえ,先に述べたとおり,夫も妻も親を敬うべきです。箴言 23章22節には,「あなたを誕生させた父に聴き従い,ただ年老いたからといって,あなたの母をさげすんではならない」とあります。では,あなたの親もしくは配偶者の親が上述の頭の権の原則を踏み越え,自分たちの意見を押しつけようとする場合,どうしたらよいでしょうか。
何ができるか:
親から干渉されているように感じたとしても,感情移入を働かせ,親の動機を見極めるようにしましょう。冒頭に出てきたライアンは,「ある場合,親は自分たちがまだ子どもにとって必要な存在だということを実感したいのです」と言います。そのような場合,親は干渉しているつもりはないかもしれず,夫婦は次の聖書の訓戒を当てはめることによって対処できるでしょう。「だれかに対して不満の理由がある場合でも,引き続き互いに忍び,互いに惜しみなく許し合いなさい」。(コロサイ 3:13)しかし,親があまりにも干渉するため,あなたと配偶者との間にあつれきが生じるならどうでしょうか。
親との関係において,きちんと一線を引くようにした夫婦もいます。これは,厳しく制限を言い渡すという意味ではありません。 * 多くの場合,あなたが配偶者の意向を優先させていることを行動によってはっきり示すだけで十分です。例えば,日本の雅行はこう言います。「親がいろいろ言ってきたとしても,すぐにその見方や考え方に同意するのではなく,配偶者がどう見ているか知るようにしてください。自分たちが別の新しい家庭を築いているということを忘れないようにします」。
やってみましょう: 親の干渉が具体的にどのように夫婦間のいさかいの原因となっているか,配偶者と話し合います。親に敬意を示しつつ,どこで一線を引き,親が立ち入ってきたときにどうするかを書き記します。
配偶者の親との関係が緊張しても,親の動機を見極め,夫婦間のいさかいに発展しないようにすることにより,問題を軽減できることが少なくありません。ジェニーはこう述べています。「親について夫婦で話し合っていると,かなり感情的になることがありました。互いの親の不完全さを非難すると,ひどく傷つけ合うことになります。でも,やがてわたしたちは親の不完全さを持ち出して相手を打ちのめすのをやめ,目の前の問題と取り組むことに努力を傾けるようになりました。その結果,夫婦の絆がとても強まりました」。
^ 3節 名前は変えてあります。
^ 14節 親が重大な悪行にかかわっている場合 ― とりわけ,悔い改めず継続的に行なっている場合 ― は,家族関係がかなり緊張しかねず,接触を制限するのもやむを得ないでしょう。―コリント第一 5:11。
^ 19節 親と率直な話し合いをしなければならない場合もあるかもしれません。そういう時には,敬意のこもった温和な態度を表わすようにしましょう。―箴言 15:1。エフェソス 4:2。コロサイ 3:12。
考えてみましょう…
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わたしの配偶者の親には,どんな良いところがあるだろうか。
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どうすれば,配偶者をないがしろにすることなく自分の親を敬えるだろうか。